柱や壁に隠れてはんぶん顔をのぞかせると
龍子丸はキャハキャハ言ってかけてくる
いま地上で俺が柱や壁にはんぶん隠れるだけで一番喜ぶ人だ
だから俺が抱きしめに行きたくなる
現場で、
電気屋が
電線を巻きつけていた木製のドラムをころころ転がしている
ちいさいころ
俺がまだ京都にいた頃
俺のお母さんがあれを拾ってきてペンキを塗ってテーブルにしてた
俺のお母さんは美人だったと思う
子どもだって少しわかっている
たまに父に殴られていた
お母さん
電気屋がころころまわすドラムを見てお母さんに抱きしめてもらいたくなった
ありがとう
ごめんさない
おかあさん、大好きだよ
これ。
