ポリポ


ポリフェノールは体にいいということで
毎日朝からワインばかり飲んでいる我妻にかける言葉は見つからず
あるいは安堵してオレもいただく昼下がりの都営住宅のベランダから
恐竜を絶滅させたのはオレなんだと
向いのベランダのふとった人妻のたるんだ腕を見つめながら
たいして気まずくない沈黙が俺たちを包む
ポリフェノールは毛穴から
見えないしゃぼん玉となって空へと拡る



通りで椅子に座っている老人
椅子に座っているだけで何もしない老人
足元に日が射している
影は鋭く斜めになっている
こうしているとあの人は
おじいさんだかおばあさんだか分かんなくなってくるな
静かに本を読んでいるようにも見える
世界という本を
じゃなきゃもう
とっくにくたばっているのかも知れん