メイン州にて

懐中電灯の白い光に
次々と映し出される葉々の
生命の持つみずみずしさと気持ち悪さに
その圧倒的な現実感に自己の存在を脅かされながら
私は夜の森を歩いた
ものも言わず頬に刺さる針葉樹の枝先
だんご虫や百足たちの絶え間ない営み
時には四つん這いで歩いた
土は湿っていた
私は水を思い出した
それから、海がみたいと思った
海はどっちだろうか


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片方の歯だけでポテトチップスを食べるのは難儀だ
痛みによっては
普段痛い方の歯でかまなければいけない必要もある
結局、
俺が虫歯の治療に出かけないのは
歯がすべて治るまえに俺が死んだら
歯医者に行った時間が損になると思うから
そして俺は歯医者や社会のやり方を信じていないから。


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専門家が集まって決めたというのなら尚更お行儀が良いだけで、たちが悪く仕上がる
なぜ専門でない人間を呼ばないのか
人類が創り上げてきた英知を総動員させても
全宇宙が計り得ないということは薄々知っているくせに。


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弱者は常に、強者を殺してよい

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信号待ちで
ダウン症の少年の背後に忍び寄り
セクシーセックス、セクシーセックスと、耳元でささやき続けると
彼らは困ったり笑ったりする
その両方の顔はとてもかわいい。

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