三島由紀夫 最後の演説

諸君は去年の10・21から後だ。
もはや憲法を守る軍隊になってしまったんだよ。
自衛隊が20年間、血と涙で待った憲法改正ってものの機会は無いんだ。
もうそれは、政治的プログラムからはずされたんだ。
ついに、はずされさんだ、それは。どうして、それに気が付いてくれなかったんだ。
去年の10・21から1年間、俺は自衛隊が起るのを待ってた。
もうこれで憲法改正のチャンスは無い!
自衛隊が国軍になる日は無い!健軍の本義は無い!
それを私は最も嘆いていたんだ。
自衛隊にとって、建軍の本義とは何だ、日本を守る事だろう。
日本を守るとは何だ?
日本を守るとは、天皇を中心とする、歴史と文化の伝統を守る事だ。



お前ら聴け!聴け!静かにせい、静粛にせい、話を聴け!
男一匹が、命を懸けて、諸君に訴えているんだぞ!
それがだ、今日本人がだ、ここでもって立ち上がらなければ、
自衛隊が立ち上がらなきゃ、憲法改正ってものは無いんだよ。
諸君は永久に只、アメリカの軍隊になってしまうんだぞ。
諸君の任務というのは結局、アメリからしか来ないんだ。
シビリアンコントロールといってる諸君はともかく・・・
シビリアンコントロールに毒されてるんだ。
シビリアンコントロールというのはだな、
憲法下でこらえるのが、シビリアンコントロールではないぞ。
そこでだ、俺は4年待ったんだよ。俺は4年待ったんだ・・・
自衛隊が立ち上がる日を!
そうした自衛隊の・・・4年待ってだな・・・
最後の30分に!最後の30分に!だから今待ってるんだよ。



諸君は武士だろう! 諸君は武士だろう、武士ならば・・・
自分を否定する憲法を、どうして守るんだ。
どうして、自分の否定する憲法のため、
自分達を否定する憲法というものにペコペコするんだ。
これが有る限り、諸君は永久に救われんのだぞ。
諸君は永久に・・・
今の憲法は政治的謀略に諸君が合憲かのごとく装っているが、
自衛隊違憲なんだよ。
自衛隊違憲なんだ !
憲法というものは、自衛隊というものは、
憲法を守る軍隊になったのだという事に、どうして気が付かんのだ!
どうしてそこに貴様達、気が付かんのだ!
俺は諸君が、それを断つ日を待ちに待ってたんだ。
諸君はその中でも只、小さい根性ばっかりに惑わされて、
惑わされてしまって、本当に、日本のために立ち上がる時は無いんだ。
憲法のために・・・日本を骨無しにした憲法に従って来た、という事を知らないのか!
諸君の中に一人でも、俺と一緒に起つ奴は居ないのか。
・・・一人も居ないんだな。よし !
武というものはだ・・・刀というものは何だ。
自分の使命、事に対して、
今諸君が憲法改正のために立ち上がらないと、見極めがついた。
これで俺の自衛隊に対する夢は無くなったんだ。
それでは、ここで、俺は天皇陛下萬歳を叫ぶ!・・・・・