試合 デッサン

試合ははじまっていたが皆はベンチにいて焼き鳥を食べたりキスしたり自殺したりしていた
俺はFWからGKまでこなして一人グラウンドで走り回った
最初は目立てたのでよかったが次第にやっぱ疲れてきた
だいいち敵がみえないし
俺はゴーストバスターズじゃない


俺のコーナーキック
俺がスーパーボレーで合わせる
間一髪透明のゴールキーパーに阻まれる
俺は地面を叩いてハーフェーラインまで戻り敵に交わされる
地面からもぐらが出てきてこけてしまったのだ
ベンチから誰かが顕微鏡を持ってフィールドに出てきてもぐらの研究をはじめている
なぜこの敵との試合を手伝ってくれないのかと謎で笑ってしまうが
とりあえずフィールドに味方がいるだけでも嬉しい
瞳孔を広げてゴールエリアに戻る
みえない敵がシュートを打つ
また誰かが自殺する
ファインセーブじゃなくて俺はゴールポストに頭をぶつけて血が出た
超痛い
けどヒーローぽいな俺
頭から血が出てるのにがんばってるから。



ベンチでは選手たちがサンドイッチにドレッシングをかけたり振り子時計を修理したり
或いは「試合とは何か?」を議論する一団
もぐらの生態を石版に彫る人
その彫る人に恋してる人
恋してる人に嫉妬してる女
嫉妬してる人の絵を描いて展覧会に出そうとしてる髭の男
盗んだベンツで海に行く若者たち









ああ
みんなユニフォームきてるのに試合しない










0-0で前半を折り返す
誰かが濡れタオルで俺を拭いてくれたり冷たいバヤリースを飲ませてくれる
違う誰かが俺をベタ誉めしている
俺は出来るだけ冷静にせかいの分析につとめようとする
太陽をみて目を閉じて考える




























わからん・・・































気がつくと数人の子どもたちがはだしでフィールドでストレッチをしている
おお
さすが、自分が固まっていない選手にはまだ可能性があるな
と、俺は思った
三十を越えた人間はほとんど桜の木のしたで宴会をはじめているか協会の事務所から出てこないのだ