新宿三丁目の画廊での出来事

数年前、知り合いが新宿三丁目の画廊で個展をやるというので
オープニングパーティに朗読をしに出席した
途中で、酔った主催者がミキ君には嫉妬すると言い出して困った
彼はカメラマンであった
身体を動かし表現する俺に嫉妬すると。
何人かは終電を逃して、あるいは明日という現実から逃げて
画廊に居座り
酒がなくなり誰かがガンジャをまわし始めた
俺は別のものが体内に残っていたので遠慮した
全身刺青の男と俺には一つのラインがあった
暑くもないのに服を脱ぎだす奴は嫌いなんだよ
やがて全身刺青の男が彼の手下をこづきはじめ
しだにそれは暴力と呼べるようなものへと変化していった
BAD TRIP
別の彫師の女とみんなの仲裁によって彼らは帰った
それからどれくらい時間がたっただろう
誰かが激しく扉を叩く
画廊は貸切になっているが近隣の苦情がくるとマズいので
扉を開ける
さっきまでこずかれていた手下の男が、物干し竿を持ってみんなに襲いかかってきたのだ
「兄貴を馬鹿にしやがって!兄貴を馬鹿にしやがって!」
完全にトチ狂っていた
ある種の特殊な興奮状態に陥っている
皆で押さえつけては会話を試み、そしてまた暴れる
誰かが重症を負ったり、あるいは死者が出たっておかしくないほど彼はイカれていた
生命の危機を感じながら、
この場にいる人間は誰も警察に通報できないことを知っていた
一人の若者の兄貴への忠誠心
多分君の兄貴を怒らせたのは俺だろう
俺は画廊内にある硝子の灰皿や本当に危ういものをキープした
誰かの目に触れないように
あるいは俺が最後に使用するかも知れない為に
そんなことが一時間は続いた
一時間中、暴れたりはがいじめにしたりしていると疲れて涙が出てきた
金はなかったけれどタクシーに乗った。