2011-07-14

十二時に池袋で待ち合わせをして近藤くんと北口の「大都会」で飲む
大都会というのは店の名前だ
ここは食券制でビール4杯1000円とかビール10杯2500円とかかなり大ざっぱでいい
コンクリートBARは嫌いだ
木造の昭和の面影が残るようなこういう店がいい
近藤君は俺に自信をもたせてくれる数少ない友人だ
会話をすることによって俺の頭も整理されていくなんて素晴らしい
たいがいはまるで俺一人が混乱の坩堝に落ちて行く限り


隣の客が携帯で怪しい手形の話をしだしたので近藤くんを散歩に誘った
俺たちは昼間から酔っ払い、東京は熱かった
北口の商店街をベムスターに向かい、途中で池袋の森に立ち寄る
ホテル街の端に小さな森があるのだ
池袋は結構うろついているけれど、つい先日ここの存在を知った
管理人がいて池にザリガニを放すな、という立て札が立っている
ログハウスは不適切な使い方をした人がいるので使用中止になっている
きっと楽しいことが行われたのだろう



夜、タッキーの生誕40周年朗読があるというので多分行くと言って別れ
近藤くんは1000円の散髪屋で髪を切りゴールデン街に向かった
俺は子供を保育園に迎えに行き
西友でガンバライド(仮面ライダーのカードゲーム)に200円分付き合い
家で一時間うたたねをしてから渋谷に向かった
交番で「道玄坂ってどの坂ですか?」と聞いたら
109を左に折れる坂だと教えてくれた





夜の街を、用事を持って歩くのは嬉しいことだ。





近藤くんがかおりちゃんと受付をしていた
かおりちゃんは笑うと目がなくなってかわいい
客席のキャミソールを着た女子の背筋にキスをしたい、背骨の上に舌をはわせたい
という欲求から目をそらす為に
朗読に集中したり
カウンターの上で指輪を転がせてそれをハンドパワーで操っているというふりをして遊んだ
そういう意味で俺の人生はとても忙しく
生産性のないことに日々大量のエネルギーを費やさなければならない
ペースターボのマスターの感じが良く、ハイボールの作り方も繊細だった
ただコンクリートBARなので600円もするからすぐに金がなくなった
店に犬がいてしばらく見つめていたら
耳を塞いで歯をむき出しにしたので逃げた
犬は俺にだけそうした
俺は犬の主人になることを拒否しているので
犬としては上下関係の判断に困ったのかも知れない
犬は最終的に、俺は犬より下の存在だというふうに解釈したのではないか
俺は犬の生き方が嫌いだ


陳くん、加久ちゃん なつかしい顔にもあった
陳くんはジャンク派の活動を再会しだしているらしい
陳くんのお父さんが詩学からほど近い本郷でやっていたBARに何回か飲みに行ったことがある
よくしゃべるお父さんだった
今は体を壊して店をたたんでいるらしい
加久ちゃんは、近藤くんとラビットファイターに軽めにくどかれていた
タッキーが笑いながらきつい目で制止していたので何も起こらないだろう
タッキーは坊主であいわらず背が小さかった
そしてよく動いていた
ステージが終わってお客さんみんなのテーブルを回った
芸人みたいだな、と俺は思った
タッキーは、
笑いが、
常に少しだけ
彼が抱える大きな葛藤をうわまっているで
生きているまっとうな人間に会えているという気がして、俺は安心する
タッキーが俺に抱きつこうとした時、ハグの意味を俺に理解させてくれた。


俺はトイレで少し、
自分が今置かれている状況と世界の親和性を整理し
渋谷をここは俺の街だという風な歩き方でかえった。